シンクロニズム 戦艦の論 6 - 9 「おみやげみっつ、たこみっつ。おみやげみっつ、たこみっつ。」







ちきゅうじんこどものロビーとレイチェル  其の一 


〜 『 サマー大戦争 』 〜





選0. おおかみこどもの雨と雪」40点
→ http://movie.maeda-y.com/movie/01698.htm より以下引用 (『宇宙戦争』に35点つけた評論家)


この映画を見るとどこか落ち着かない気分にさせられる。生理的に受け付けないというか、演技も演出もくさくて見ていられないというものである。それは、監督の考察の浅さに原因の一つがあるのではないかと思う。この監督が出産子育てを経験したことがあるのかどうか知らないが、作品を見る限りではどうもそれらを想像メインで描いているような、表層的なものを感じてしまうのである。(中略)

いずれにせよこれをエンターテイメントとして仕上げるには相当な力量がいる。本作を見る限りまだその域に渡しているとは思えないが、それでも細田監督の次回作には期待したい。テーマの選別さえ誤らなければ、傑作を量産できる才能であることだけは間違いないのだから。




選1. 時をかける少女が大好きで、
→ http://movies.yahoo.co.jp/movie/おおかみこどもの雨と雪/341770/review/…/1515/?c=18&sort=lrf より以下引用


先日バケモノの子が完成したとのことでサマーウォーズと合わせて見てみましたが私にはこの監督の作品が合いませんでした。
原作ありきの方なのですね。
この人の描く人物はストーリーに動かされているようでいつも嘘臭い。海外でロードショーとか外へ持ち出す前に内へ返ってキャラの人物像から練り直したら如何ですか




選2. 感動なんてとんでもない
→ http://movies.yahoo.co.jp/movie/おおかみこどもの雨と雪/341770/review/この監督が嫌いになった/1639/?c=1&sort=lrf より以下引用


時をかける少女サマーウォーズでこの監督が好きになった。
が、この作品で一気に嫌いになった。
サマーウォーズでも少々幼い、嫌な感じはあったが、全体的な印象で帳消しにできた。

しかしコレは酷い。設定・世界観が雑すぎる。感動なんてとんでもない。
全編にわたり描写が幼く、世間を知らない人が作った作品だと感じた。
山で生きることを決め、家を出た息子にあのセリフ。感動的な音楽。ゲンナリした。




選3. 家族の機能不全っぷり
→ http://movies.yahoo.co.jp/movie/おおかみこどもの雨と雪/341770/review/前半まあまあ、途中から違和感、後味は悪い/1512/?c=21&sort=lrf より以下引用


が、中盤から違和感というか何と言うか、(中略)

この映画、「不幸な子供」の話にしたいのか、「夫に先立たれて一人で生きるけなげな妻」の話にしたいのか、どっちだったんだろう?
『健気な母親』の子供が『放置子』って組み合わせは無理があるだろう、どう考えても。

花に感情移入して「頑張ってる私」に感動するか、
雨や雪の「孤独で不幸な美少女(or少年)」に酔うか、
見る人間の器用さが求められるアニメだと思いました。
もしくは全体を見て「家族の機能不全っぷり」に乾いた笑いしか出ない、とか。

何と言うか、バラバラの違和感だけが残る嫌な後味でした。




選4. 賛否が本当に両極端
→ http://raikumakoto.com/archives/7383462.html より以下引用


で、まず、とても期待が高かったのがあります。で、観た感想が、
これで終わりなのか?」
でした。
こんな終わり方で良いのか?まずは盛り上がりもないし、問題の何も解決にもなってないし、何か幸せ的な物を手に入れたのかも解らなかった。(中略)

と、つらつらと自分の思った批判を書きました。

この映画で、とにかく感動したという人は
私のこの批判等、観ている間きっと全く気にならなかったと思います。(中略)

いろんな所で言われてますが、これほど賛否が分かれる作品も珍しいです。で、この賛否が本当に両極端なのです。不思議な力の映画と思います。





    











 「君のコメントに感謝するよ」 2



おおかみこどもの雨と雪』と『宇宙戦争 WAR OF THE WORLDS 』は、意外に似ている。


ウルトラ文脈とキャメ論


“日本のファンタジー系・ケモノ萌えアニメ”と、“海外のSF・リアル戦争ホラー”とでは、作品イメージに距離があり、ジャンル的にはまったく正反対である。TSUTAYAの新人アルバイトでも、この分類を間違えることはない。だが「戦艦の論」では、極端に異なっていると見なされる二つのタイトル『雨雪』&『宇宙戦争』を、いずれもウルトラセブン文脈(変身&侵略)の中で登場させてきた。

参照( 戦艦の論 5-8 「母が好きになった男は、おおかみおとこでした」)
http://d.hatena.ne.jp/BRIDGET/20140412

“母”と“父”だから、主人公設定は背反しているが、「テーマ的」には接近、もしくはオーバーラップ、もしくは「うり二つ」ではないかと考えているからだ。詳しくは後述する。セブン系譜上の共通祖先、ゴジラ分派『ターミネーター』(生涯の伴侶を失った母親の子育て)のジェームズ・キャメロン論(『未知との遭遇』>『アビス』>『宇宙戦争』)で語ることもできる。







ちきゅうじんこどものロビーとレイチェル  其の二 


〜 『 夏映画祭り 』 〜




おおかみこどもの雨と雪』と『宇宙戦争 WAR OF THE WORLDS 』は、

 夏の話題作として、
 メディアの大宣伝に乗っかって、
 普段映画を見ないような人を巻き込んで、
 大ヒットしたのはいずれも同じ。

 もともと安定した人気のある監督作品で、
 ファンがこぞって観に行ったのと、
 好き嫌い、評価が真っ二つに分かれたのと、
 後にアンチファンが大発生したのが同じ。

 片親と息子、娘のキャラクター構図と、
 性格設定真逆(後で逆転)の二人の子を必死に守る展開と、
 身を守るおまじないが何度も出てくるのと、
 実子を連れて、もう片方の親の故郷へ向かうのと、
 訪問者が(何も入らない、入っていない)冷蔵庫を気にするのと、
 おおかみこどもたちと、たこみっつ(三脚メカ)のおみやげ(嘔吐)シーンがあるのと、
 娘が「おしっこ!」と言いだすのと、
 川で人(おおかみ)が死んでいるのを目撃するのと、
 川で溺れるが助かって息子が狂奔するのと、
 たこみっつ(うちゅうじん)が挿入されるのと、
 偏屈な男に出会って一皮むけるのと、
 近寄ってくる人に突然襲い掛かったりするのと、
 子離れされて主人公が取り残される結末が同じ。

 中盤までは傑作だが途中から暗すぎて、
 クライマックスの意味がわからないという大多数の感想と、
 映画評論家(37.5点)の「踏み絵」後のリアクションが同じ。



食卓と笑顔


似ている演出を細かく数えればきりがない。めずらしい食べ物を通して、三者の関係性を語るシーンは説明しなければ伝わらないかもしれない。だが、どちらの作品もしっかり描写していて興味深い。


宇宙戦争
ホムス」(中東世界のソウルフード。食物繊維と蛋白質が豊富なひよこ豆のディップ)
レイチェルがデリバリーで取り寄せた自然食品。ジャンクフードを好むであろうレイは一口食べるなり、食えるものではないと苦笑いした。彼女は別れた母親の影響により、添加物(人工香料、調味料等)を排した健康な食生活を送っている。また父親レイは、娘がピーナッツアレルギーであることも知らない。そこから、一緒に食卓を囲んだことがないことがわかる。


『雨雪』
美味だれやきとり」(花の出身地「上田」のソウルフード。ニンニクたっぷりのタレに浸して食べるやきとり)
花と彼(おおかみおとこ)が一緒に食卓を囲んだときのメインディッシュで、幸せを象徴するようにたくさん並べてある。しばらくして、彼と死に別れ都会で孤立し、田舎暮らしを始め節約をせまられる中、四本だけ焼き、三本を母子で分け、一本は彼の写真(免許証)に供えた。子供たちが二人とも巣立つと、二本になってエンディングとなる。







映画の第一印象を決める、ポスターに描かれた主人公らの配置は「少し」似ている。しかし、ネームバリューのないジャスティン(ロビー)がいないので同じではない。気になって「こどもを抱きかかえるポーズ」の映画チラシはどのくらいあるものかと、「キネ旬チラシ大辞典」で探してみたが、子役のダコタ出演作(『アイ・アム・サム』とか)含め、他に類例を見つけることはできなかった。そこで「子育て 映画」の画像検索で探したところターミネーターの、いや、シュワちゃんの『キンダガートン・コップ』が出てきた、これはかなり似ている、でも他人のこどもが大勢いてみんな笑っている。笑顔かどうかの違いは大きい。



『雨雪』&『宇宙戦争』のキービジュアルに笑顔はない。主人公「花」&「レイ」の表情からは、目前の危機に屈しない姿勢、不安と同時に決意が読み取れる。ここまで累積した共通点は小さくない、「憧憬の空似」と言える。



子育て映画におおよそ不可欠な「ハッピー」は、それほど重要な入り口になっていない。むしろ、その障害となる「抵抗圧力」と向き合うことに力点が置かれている。かといって「勇気」だけに終始しない。「血を分けた存在」の本性から逃げずに、それを見守っていく、この平凡な愛の営みこそが大切と言っているようだ。


 つづく






 





 









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