シンクロニズム 戦艦の論 5-8 「母が好きになった男は、おおかみおとこでした」





[サラ と 未来の戦士] 脚本・監督ジェームズ・キャメロン 方面




〜 現代にいるのはヤツと俺だけ 〜


ジャックや、コナンや、金田や、シンジや、キャスバルや、、




(画像は宣伝用のもの)



健二や、ユリーシャのように、鋼鉄の手錠をかけられたレジスタンスの「カイル・リース」は、
2029年より時をかけて、伝説の女性に会いに来ていた。
生涯で、ただひとり愛した彼女を守るために。






  「敵は誰だって?」



 「コンピューターの防衛システムだよ!」

 「サイバーダイン社が、軍のために作ったシステムだ」



  「じゃあコンピューターが、ジョンの母親を殺せば、戦争に勝てると思考しているんだね」
 
  「なぜ、ジョンを殺さない?」



 「手遅れだからだ」

 「俺は、向こうの防衛網を破壊した、勝負は決まりだ」

 「スカイネットは、彼が産まれるのを阻止するしかなかったんだ!!」




精神科医のシルバーマンは、理解する風を装っていたが、内実は懸命に警告するカイルを、逝かれたサイコ野郎と決めつけていた。夜中に呼び出された彼は、ほとほと疲れたというように、おざなりな捜査協力を終えると不機嫌そうに署を出た。十何年か後に「帰ってきたターミネーター 」とも遭遇するシルバーマンと、入れ違いにやって来たのは「初代ターミネーター」だ。


時間外窓口で、行政事務職お得意の門前払いを食らうが、表情を変える事なく「マタ来ル」と言い残すと、奪った車のアクセルを全開にし、壁をぶち壊して所内に突入した。電源ケーブルを引きちぎり、暗闇の中、両手に構えた自動小銃を乱射すると、カイルを拘禁していた武装職員たちは、ほどなく皆殺しにされた。“ターミネーターが来た” のオオカミ少年は、皮肉にも、混乱に乗じてサラを連れて逃げ出すことに成功した。


陣内侘助が開発したハッキングAIのように、意思を持って自らの敵に攻撃を加えることができる「スカイネット・コンピューター」は、時空転移装置を使って、1984年のロサンジェルスに刺客を送り込んでいた。“ 初代 ”のお陰で、ごく普通のウェイトレスだったサラは、その日から大大混乱に陥り、逃亡を助けてくれたカイルはあっけなく亡くなった。しかし一瞬の出会いで、人類を救う英雄を宿したサラに、悲しんでいる暇はない。




 「どこにいるかは言えないのよ、ママ」



  「どうして教えてくれないの、どうにかなりそう、、」


 
 「わかった、これが番号よ、、」
 
 「もう切らなきゃ、くわしいこと言えなくてごめんね」



  「愛してるわ」
 


 「私も愛してるわ」



母親の声色で、サラの居場所を聞き出したのは“ 初代 ”である。
すでに友人たちを斬殺されていたサラは、この時点で愛する母も失い天涯孤独の身に陥った。









[花 と おおかみこどもの雨]1  監督 細田 守 方面




〜 いるのはあの人と、私だけ 〜



  「同じ団地でも家の中はまるで違うんだ」


  「お金のある家、ない家」


  「家族がたくさんいる家、ひとりの家」


  「赤ん坊のいる家、年寄りだけの家」



引越し屋のアルバイトを通じて多くの家を行き来し、生活感溢れる “ つましい日常 ” を見てうらやましく憶う、あるひとりの青年には秘密があった。飾り気ない服装の下から覗く俊敏さを秘めた体躯、目立たぬようにやや猫背で歩き、切れ長の目に寂しい影を漂わせた彼は、人間ではなく、オオカミ男だったのだ。ターミネーターのように犬に吠えまくられるのはそのためだ。



  「家が、あったらいいだろうなぁ “ ただいま ” って言う」

  「いいだろうなぁ。」

  「何をしてもいい、自分の家だもの」



 「じゃあ、私が “ お帰り ” って言ってあげるよ。」




陣内家のような親戚を持たず、父子家庭に育ち、育ててくれた、その父とも死別したため、まわりの女子大生のように、連れ立って遊びに行く事もなく、いくつものアルバイトを掛け持ちしながら、自らの生活費を稼いでいた奨学生「花」は、恥じらいの “ 愛情告白 ” の後の、苦悶の “ 偽装告白 ” に、さして動じなかった。


  「花、僕は、僕はね、、人間じゃないんだよ! 」

  「オオカミの血を引く最後の生き残りなんだ」

  「びっくりしただろう?」



 「うぅん、人であろうと獣であろうと、、」

 「あなたはあなたに、変わりないじゃないの。たとえ、ウルトラセブンでも、、」



  「ありがとう、アンヌ! 」 





誰かに頼ることなく、ひとり強く生きるために、つらい事があっても周囲に合わせ、いつも笑っていなければと、自ら言い聞かせている健気な「花」と、何かしたくても、周囲に合わせることすら出来ず、ひとり生きる選択肢しかあり得なかった、諦観の「オオカミ男」は、それだけ引き寄せるものがあった。


しばらく後、雨の日と、雪の日に、ふたつの生命を授けてくれた彼は、ジャックやカイルのように、一途過ぎる愛の証明を果たすと、あっけなく亡くなった。人間より早く寿命が尽きたのかもしれない。しかし、おおかみもこどもを育てなければならない「花」に、悲しんでいる暇はない。









 






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