シンクロニズム戦艦の論 3-9　「彼女が水着にきがえたら」

_宇宙世紀0079年
12月30日

レビル将軍指揮する地球連邦軍艦隊は、
ア・バオア・クーに対する第三戦闘ライン上に集結しつつあった。

「ア・バオア・クーのギレンである、最終目標を伝える」

「敵は、ゲルドルバ照準にあり」

「了解であります、ソーラ・レイシステム、スタンバイ」

_アサクラ大佐

地球連邦軍のレビル将軍に対し、
和平を申し込んだジオン公国のデギン・ザビ公王は、
極秘に少数のグレート・デギン艦隊を率いて、トップ会談へ臨むべく敵陣に先行した。
しかしジオン方の究極兵器によって、戦争の両巨頭が共に宇宙艦隊ごと消滅した。

ソーラ・レイは宇宙コロニーの住民を強制疎開させて武器にしたもので、
円筒そのものを砲身にした、波動砲より巨大な放射兵器である。

「敢えて言おう、カスである」の煽動演説は、
当主不在の動揺を生まないよう、事前準備して発射直後に行われた。

空前絶後の超兵器を発動させたのは、
軍事行政を事実上独裁している公王の嫡男ギレン・ザビ総帥で、
実際に現場で射撃命令を伝達したのは、
ソーラ・レイを開発したと思われる技術顧問の「アサクラ」大佐であった。

ジオン軍には珍しい和風名だ、そして
織田信長に滅ぼされた名家朝倉氏と同じだ。

「戦争」とは、

最も高度に知性を働かせ、

最も盛大に財力を投入し、

最も斬新な技術を用いた、

敵管理職からの権限簒奪企画である。

対峙する利害関係者が軍事力を持っていて、
自衛のため偶発的に交戦状態に陥ったとしても、
これは「戦闘」であって、必ずしも戦争とは言わない。

政治的に対抗している相手国が、自国に向けてミサイル発射実験をするのは、
外交戦略上の「アクション」の一種で、運悪く着弾による死傷者が出たとしても、
直ちに戦争状態に入ったとは言えない。

戦闘が戦争に「昇格」するためには、国家なり連合なりの統率された組織が、
明確に意志決定を末端にまで伝達できることが必須で、
各分野に渡って膨大な管理業務を行う人員が手配されなければならない。

まず、目的、予算、体制、リスクが、各方面スペシャリストによって吟味される。
続いて、幹部職員によって計画がまとまると、
ピラミッド組織の頂点に立つリーダーによって戦争プランが採決され、
全世界に対し開戦宣言がなされる。

秩序を排した暴動やテロは、破壊行動を伴うが、
正規職員による、明文化された手続きが一切行われないので、
いくら規模が大きくなろうと、公式な戦争の定義に入らない。

むしろ、デパートが企画する
「夏の水着キャンペーン」と戦争の概念は近い。

戦艦並みのビルを多数所有するオーナーの権限によって、
最新鋭モデルを調達、繊維産業と連携して布きれの設計を吟味、
多額の広報予算をバラまき、ロビイストらを手なずけ、
ショップ店員を激励し、競合を打ち砕く販売戦略を実行する。

後は、消費者の下心を利用して、
人命損耗を財産損耗に衣替えさせれば、構造は概ね同一である。

そもそも「キャンペーン」は戦争を意味する語源から発生した。
だからといってキャンペーンガールを直訳すると
「戦役少女」になり意味不明だから、考え過ぎないでいい。

ただ、日本では特種な戦後教育が行われていたため、
別の概念との比較が強調され、論議は建設的な流れを放棄し、
出口を失ってしばしば迷走する。

ところで、戦争はどのようにして「停止」するのか。
敵の戦闘力を根こそぎ奪うのが、最も単純な答えだが、
全面的に争えば、味方の損害も増える。
相手の兵士だって命令でやむなく戦っている、
恨みによって、お互いの感情がもつれる前に決着をつけたいはずだ。

戦争とは、徴兵や無言帰国や資産凍結でありながら、
国民一丸で盛り上がることもある、一種の「イベント」企画である。
もし、その管理業務に重大な失陥が生じれば、
いかに強大な機械化兵団を、継続的に動員する能力があったとしても、
国家はそれを遂行することが出来ない。

独裁色の強い制度下に発達した組織は、
リーダーが不在化した途端に敗北、もしくは停戦するが、
高度に行政制度(中間管理職)が発達した組織は、
目的達成した後も、目的達成不可能と分かった後も、
組織防衛本能から、戦争を継続しようとするので一層始末が悪い。

敵は、本能寺にあり。

自慢だが、むかしむかし「夏休みリーダー研修」というものが会津若松であり、
そこで甲子園のヒロイン浅倉南のような美少女に出会った。
新潟は、越前浜に住んでいた、朝倉さんだ。
朝倉義景は、越前朝倉氏最後の当主であるが、その子孫が越後に逃れ住んだ説が残っている。