シンクロニズム 戦艦の論 2-11 「必ずここへ帰って来ると、手を振る人に笑顔でこたえ」





第一章 〜 第三章 第8話まで「八艘飛び」要約



時は22世紀末。
天上から「逆落とし」で来襲する、
ガミラスに対しなすすべない遠い未来の子孫は、
地下のシェルターに身を潜めていた。

ある日、彼らはイスカンダルという、
彼方からの救世主に出会う。

唐突に「波動」の力を身につけた戦艦は、
冥王星の敵前線基地を壊滅させると、
人類史上初めて、太陽系の呪縛を乗り越えた。

そして、
波動砲の一撃は、立ちふさがる別の太陽の巨大フレアを貫き、
大海原への道を開けた――。



「虜獲された彼の口から語られるのは、真実か、虚実か」


「機械同士の交流、その果てに答えはあるか」


「ヒトとは、キカイとは、そしてココロとは」


「次回、『時計仕掛けの虜囚』」




宇宙戦艦ヤマト2199」。

第9話は、「観測員9号の心」という、

艦内ラジオ番組で語られる、
火星開拓時代の寓話(21世紀末の名作)をモチーフに、
ストーリーがシンクロする、新作オリジナルの回である。

ガミラス兵を捕らえるところと、
アナライザー(A09)が感情を表現するところとで、
わずかに旧作エピソードを残している。



とある船員室――。
昭和のアナログ木箱は、
大きなチューニングメモリと三つのつまみがあるだけ。
凡そ未来の音声装置らしくない。

周波数99を差している、
その骨董品が置かれた本棚には、
難しそうな専門書の背表紙が、後ろから一部覗いている。

題名が確認できるのは萩原朔太郎の「帰郷者」のみ。
危険な旅の目的は戦争勝利ではなく、必ず帰ることにあった。
持ち込んだ私物に、その使命を託しているかのよう。

「ヤマトラジオ文学館」で朗読をする、番組DJ「岬百合亜」に、
「しろしんた」のペンネームで、「観測員9号の心」をリクエストしたのは、作戦部9課の真田であった。

投稿名が「9号」でも「9番」でもなかったのが惜しい。




艦隊戦もなく、飛ばしてもかまわない風(サイドストーリー)を装っているが、
随所にSF小説へのオマージュをちりばめ、さりげなく後半のテーマを暗示している。




〜 機械じかけの寓話 〜



――。
イスカンダルに向けて航行する、
宇宙戦艦のサブフレーム「A09」は、
HAL9000」が指したチェスの代わりに将棋を指した。

将棋の相手はシンジではなく、
ガミロイド「オルタ」で、
異星人の文明を探るべく、
破壊したアンドロイド兵を機能回復させていたのだ。

回収地点は土星の衛星エンケラドゥス
必需物資コスモナイトを調達するため、
資源開発プラントに立ち寄った時の戦利品である。

突如襲撃して来た武装機械兵のミッションは地球人の誘拐であったが、
アルジェリア軍のごとく瞬時に制圧、逆に虜獲されていた。

ここではティコモノリスが発見、調査された月面の切り出し現場と、
まったく同じ情景が描かれている。




〜 われはロボット〜



不思議な前触れは、やがて事件へ昇格する。

“女神”に「お前は、だれか」と訪ねられたと、
戦艦のメインフレームに侵入した「オルタ」は言う。
友達になった「A09」には、
女神が意味する人物(装置 ?)がわからない。


「あなたはだぁれ」

「こんなところで何をしているの」


森雪が呼びかけられたように振り返る場面が挿入、
未知の女性映像がフラッシュバックする。
ヤマトの内部に「謎の機能」が備えられているのだろうか。

「オルタ」は女神を求めて艦内をさまよい、保安部(突撃仕様)に追われる。
女神と呼ぶに相応しい対象物との接点は、
「アマテラス」か「ユリーシャ」しかない。


「自動航法室に近づけるなっ」


の沖田艦長のセリフ、
真田副長の意味深長な言い回しも気になるところだ。



〜 オートマタは、電気羊の夢を見るか 〜



第9話の主役は「A09」だが、
HAL9000」や、旧作のような反抗的態度を取ることがなくなった。

エヴァに比べ分かり易い展開だった新ヤマトに、
「ゼーレ、魂の座」(テレビシリーズ)以降のような変化が生まれる。

「時計仕掛け〜」は『時計じかけのオレンジ』が元ネタ。
スタンリー・キューブリックが映画化した。

スタンリー・キューブリックが監督した、
2001年宇宙の旅』の中で、ヒトザルによる武器の発明時と、
スターチャイルド」誕生時にかかるバック・グランド・ミュージックは、
交響詩ツァラトゥストラはかく語りき」で、
宇宙戦艦ヤマトが初めて大地より起ち上がった時の、
有名なサントラ(「地球を飛び立つヤマト」)と、出だしが同じである。

つまり、ガンダムを起ち上がらせた時の、
有名なサントラ(「悲壮、そして決然と」)と相似形をなしている。


宇宙戦艦ヤマトパイロット版.rv で確認


ツァラトゥストラは宗教開祖ゾロアスターのドイツ語読み、
アフラ・マズダー最高神とした。
これは天照大神(「アマテラス」)など、「太陽」の神と関連している。






・付録情報・

宇宙戦艦ヤマト2199』TBS系列全国ネット毎日曜17時放送開始(4月より)
『八重の桜』NHK大河ドラマ 毎日曜放映中
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 』ロングラン公開中
ウルトラマン』「デジタルリマスター版」TOKYO MX・毎日曜18:30放送中(マスクCタイプに突入)



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