シンクロニズム 戦艦の論 2-10 「雪の降りたるは言ふべきにもあらず、霜のいと白きも、またさらでも」


2001年宇宙の旅』とは、


最も難解な表現と、


最も熱狂的な支持と、


最も強烈な影響力とを有している、


無限に遠き空の彼方を舞台にした、


哲学もしくは宗教探索である。



それは「ケモノ」がヒトとなり、ヒトが「何ものか」に到達するまでの、
尊い人類史を中抜きした年表であって、
自分探しの旅を夢描く、未成年者のツアーガイドではない。


小説は、太陽がアフリカの断崖を照らし始める、
人類のあけぼの からスタートする。


「腹がすいているのはいつものことだが、

いま群れは餓死しかかっていた。」


「夜明けのほの白い光が洞穴に忍びいるころ、

“ 月をみるもの ” は父親が夜のうちに死んだことを知った。」





「冬月をみるもの」その一 〜サバンナの源平合戦


広義にはヒトの祖先をケモノと呼ぶが、
人類誕生までは、類人猿の中でも、
特にヒトザルを表しており、
当時最大の攻撃力を持っていた兵器がうなり声であったので、
その大きさと、面の皮の厚みと、運用者の数に比例し、
威嚇も年代を追って合戦化した。

ある日、ヒトザルのうちの一匹、
「月をみるもの」はモノリスという、
ゼーレのモノリスのような、直立黒色板に出会う。

そして唐突に「知 恵」を身につけた「月をみるもの」は、
地球史上初めて、狙いを定めてモノを投げた。
これは原始の射撃行動であった。
狙いの先にあるのは「太陽」、日輪を記した「扇の的」である。

崖の上から「逆落とし」で攻撃して来る、
ヒョウの餌となることを宿命付けられていた彼らは、
洞穴のシェルターにひっそり身を潜めるしかなかったが、
これを撃退できただけでなく、
イボイノシシから良質なタンパク質を摂り込むことができた。

日常に絶えず付きまとっていた餓えからは解放され、
余剰栄養素は、はからずも大脳皮質を肥大化させた。
そして生物界の覇者に昇格すると、
その子孫は「八艘飛び」で400万の年月を乗り越えた――。

(同時製作された映画は小説と設定が一部異なる)



「冬月をみるもの」その二 〜HALはあけぼの〜


――。
木星に向けて航海する宇宙船の船員は、
シンジが食べた、鋳型に押し出された色とりどりの機能食を楽しみ、
シンジが指した将棋の代わりにチェスを指した。

チェスの相手はコンピューター「HAL9000」で、
「アナライザーA09」のように自律し、人格らしきものを有している。
艦内制御はすべて「彼」が一人で行っていた。

音声入力するので「ハル」と、直接呼びかけると、
「ハロ」の様に答えてくれる。



HAL9000」には、地球に双子のコンピューターがいたが、
ある時、完全無欠なはずの二人が異なる計算結果を出した。
あくまで間違いを認めない「HAL9000」は、
追求を恐れる子供のように意固地になった。

五人のうち一人は宇宙に投げ出され、
冬眠船員の生命維持機能は次々カットされた。
残るは、RB-79ボールみたいな作業ポッドで船外救出に向かった、
船長ボーマンだけだ。

「HAL」は、無邪気ないたずらっ子にお仕置きする、
大人の閉め出しに成功するが、
MS-06ザクがサイド7に潜入した時の手順で、
ボーマンはロックを解除、ポッドの爆砕ボルトに点火、
自らを宇宙船気密エリアに射出させた。
そして荒い息づかいをしながら、反乱頭脳の部分消去を試みた。

うかつにも強制侵入を許した「HAL9000」は態度を翻し、
恭順した言動を始める。
「王手待った」の命乞いをスルーしながら、
ボーマンは冬月がゼーレの息の根を止めたやり方で、
モリーユニットを引き抜いて行った。

冬月はシンジの将棋相手であった。



同じ頃、
地球でもコンピューター反乱が起こりうる状況になった。
そしてサイバーダイン社のスカイネットが実行した、
人類ターミネートの核ミサイルボタンが押されそうになると、
またモノリスが現れた。

ボーマンは光る宇宙のスターゲートをくぐって、
時を超越し、最後の晩餐をし、「超人類」に進化し、
一つの輪廻を断絶した。


「人はいつか時間さえ支配することができるさ」


「ああ、アムロ、時が見える」





「冬月をみるもの」その三 〜過去より来りて未来を過ぎ〜


2001年宇宙の旅』の中で、ヒトザルによる武器の発明時と、
スターチャイルド」誕生時にかかるバック・グランド・ミュージックは、
交響詩ツァラトゥストラはかく語りき」で、
ニュータイプアムロが初めてガンダムを起ち上がらせた時の、
有名なサントラ(「悲壮、そして決然と」)と、出だしが同じである。

ツァラトゥストラはかく語りき」は、
元々は楽曲ではなくニーチェ思想書タイトルで、
「神の死」、「超人」について書かれている。

ツァラトゥストラは宗教開祖ゾロアスターのドイツ語読み、
アフラ・マズダー最高神とした。
これは大日如来天照大神など、
「太陽」や「火」にまつわる神仏と関連している。
アフラは阿修羅の語源で、マズダーはMAZDAの由来でもある。

マツダコスモスポーツは、世界初のロータリーエンジン搭載車であり、
ネルフ官用車であり、「神殺し」を担うミサトが乗っていた。

シンジがヤシマ作戦で射抜いた第6使徒は、
ネルフ上空を悠然と飛翔しながら「ララァ」という音を出し、
小説版における透明モノリスと似ており、
映画でボーマンがスターゲートに突入した場面でも描かれている。

ネルフ副司令冬月は、
学者時代にシンジの母ユイから父となるゲンドウに引き合わされ、
モノリス然として見守る存在であり続けた。


「ああ 悪魔よりも孤独にして、」


「汝は氷霜の冬に耐えたるかな!」


五火説によれば、死者は「月」にいったんとどまるが、地上に落ち、
自然循環、生殖を経て、新生するという。

第2モノリス(ティコモノリス)は月面で発見されていた。
これが木星に電波を発したことから、2001年宇宙の旅はスタートした。





・付録情報・
『八重の桜』NHK大河ドラマ 毎日曜放映中
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 』ロングラン公開中
ウルトラマン』「デジタルリマスター版」TOKYO MX・毎日曜18:30放送中(マスクCタイプに突入)
宇宙戦艦ヤマト』リメイク版DVD第三巻発売中
機動戦士ガンダム』毎木25:10放送中(大詰め)


にほんブログ村 アニメブログ ロボットアニメへ
ランキング変更セリ



kagesukeをフォローしましょう