シンクロニズム 戦艦の論 6 - 4 「ウルトラセブンの超兵器が通用しないなんて、恐るべきロボットだ」






チェックメイト 其の一  


キング・アーサー vs キング・ジョージ 〜  



「ウルトラ警備隊西へ 前編」



地球規模の侵略に備えた極秘防衛会議が、
過去に何度となく観艦式の行われてきた、日本の西の都市で開かれることになった。


今、侵略の嵐を前に、そこは深い眠りから目覚めようとしている。


とある海の奥底深く。

スーツ姿の紳士が二人、原子力潜水艦「アーサー」号の艦内で、優雅にチェスを楽しんでいた。

いずくから来襲して来た「なぞのマシーン」は、潜行していたその原潜に体当たりすると、
集団でいたぶるように、四方から放った強力ビームの餌食にした。

原潜アーサー号は防衛科学のスペシャリストを、神戸へ隠密輸送する計画だったが、
これで主要なメンバーの多くが失われた。


それでも、防衛会議は強行された。

すると今度は、海底を潜行していた4つの巨大物体が、突如として六甲山麓の上空に現れた。

飛行物体は、暗黒の星ペダンが先行して送り込んだ、スペース・バトルシップであった。

それは、おもむろに変形をはじめ、合体しつつ着地して人型を形成した。


超近代的な会議ビル前庭からは、大口径自動砲台が何基もせり出し、
威圧しながら迫ってくるこれを一斉射した。

凄まじい猛攻撃も、爆煙の中の合体ロボにはまったく通用しなかった。
兵装した第三東京市が侵入する使徒を拒めなかったように。




「ウルトラ警備隊西へ 後編」



地球からの観測ロケット打ち上げを「攻撃」と受け取って、「報復」に来ていた敵先遣部隊は、
美しい惑星の存在に気付くと、和平提案を黙殺し、迎撃準備を口実に、「逆侵略」のための戦闘船団を呼び寄せた。



 「人間は狡くて欲張りで、とんだ食わせ者だわ」

 「その証拠に、地下の防衛センターでは、ペダン星人を攻撃する為に、密かに武器を作っている」



  「それは、お前達が地球の平和を乱すからだ!」



 「それはこっちの言うことよ!」







空から迎撃任務に当たったのは、ウルトラ警備隊の「ウルトラホーク1号」である。スクランブル発進したウルトラホークは「邀撃機」というよりも、強力な火器と指揮能力を備えた、事実上の『空飛ぶ戦艦』であった。これは、幻となった同名映画企画の戦艦をブラッシュアップしたものであり、芸術家としても有名な成田亨がデザインしている。なお、「ブラウ・ブロ」(ジオン軍)のように、航行しながら三体分離するだけでなく、「シュピーゲル号」(キャプテンウルトラ)のように、各機に操縦士が分乗して戦闘することもできた。この発想をロボットに応用したのが、「ペダン星人のロボット」である。



このかっこいいロボには、当初マーチャンダイジングに不可欠な固有名詞がなかった。ドラマ制作者に、ソフビ人形を売って大儲けしようという魂胆が皆無だったからだ。しかたなく権利関係者によって後付けされた名は「キングジョー」で、脚本家「金城哲夫」(キンジョー)への謝意が込められている。


だが、最初の対戦相手が「アーサー」で、王様の名前であることから、ジョーは王様「ジョージ」にあやかった、と考えた方が、よりもっともらしくなる。それも由来の一説に加えることができるのであれば、「キング・ジョージ」、すなわち、英国艦隊の旗艦である「戦艦」が、かのスーパーロボットの「本性」であると主張できる。巨大船舶集結地「神戸港」は、セブン・地球連合軍との艦隊決戦が行われるに、最もふさわしい場所であった。







チェックメイト 其の二 

〜 キング・ジョージ vs キング・カール 〜




「ウルトラ警備隊西へ」は、


前後編に分かれる大作で、ロケを含め制作費を潤沢に使えたシリーズ前半の、人気作にして代表作である。『007』や『独立愚連隊西へ』の娯楽活劇要素を大胆に盛り込み、ストーリー的には、前シリーズ最終回「さらばウルトラマン」を踏襲しつつ、侵略というテーマを深掘りしている。宇宙恐竜「ゼットン」が、ウルトラマンの必殺技が効かなかったように、キングジョーも、アイスラッガーエメリウム光線が効かず、セブン単独では倒すことができなかった。


ちなみに、妖しく光る胸部のデザインは、ウルトラマンの生体機能を奪ったゼットンの胸板にそっくりである。頭部には電探装置をつけた射撃指揮所を設け、さらに圧倒的な強さを印象付けるため、その艦橋は分厚い鋼板で覆っている。ひとつひとつのメカが戦う武器であって、さらに合体することで大きな力を発揮するという、「スーパー戦隊」にありがちな設定も「合体戦艦キングジョー」の発明がなければ、存在しえなかったかもしれない。当然「ゲッターロボ」も、「コンバトラーV」も、「ガイキング」も、「ガンダム」も、「ガンバスター」もだ。


ところで、ウルトラセブンに関連付けられる「戦艦」は、背中に5連装砲らしきランドセルを背負った「キングジョー」だけではない。軍艦ロボット「アイアンロックス」も、元々は戦艦だ。これは、沈没した「戦艦大和」の改造兵器であり、「宇宙戦艦ヤマト」より早く具現化されている。世界中のちびっ子にウケた「ポケモン」の元祖が、セブンの「カプセル怪獣」であった事と共に、もっと驚かれ、評価されてよいことだ。



「大和の46cm砲が通用しないなんて、恐るべき宇宙人だ、セブンは」



さて、華々しい海戦を繰り広げ、セブンを窮地に陥れたキングジョーは、『七人の侍』に出てきた百姓(役の土屋嘉男)の作った「ライトン R 30 爆弾」を、手持ちバズーカ砲で撃ち込むことで、意外にあっさり倒された。このシーンはスピルバーグ版『宇宙戦争』終盤の、敵ロボ「トライポッド」の攻撃状況にそっくりだ。「グワシュ、グワシュ、グワシュ、、」と、総攻撃をものともせず、傍若無人にのし歩く時の、怪獣の息遣いとも、重金属の摩擦音とも取れる、不気味に恐怖を煽る効果音も、トライポッドのそれにかなり似ている。


というか、死に際のあっけなさはまったく同じじゃないのか。



カール・グスタフ砲に、ジャベリンを装填しろ!」


 「クリア!」


「ファイヤー、ザ 、ジャベリン!!」

















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古代 『神セブン』 時代

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