シンクロニズム 戦艦の論 セカンドシーズン 5 「九段下の壁というのは、馬鹿の壁です」


「駅」とは、

主に鉄道に対し何らかの利便を求める公衆が、
列車乗降時に使用する、
地上、または地下、もしくは空中、ややもすると海中、の施設である。
複数の移動手段を持つ現代人にとって、
必要不可欠なものではない。

しかし、人口過密地域では、
半ば強制的に通勤・通学者を集められる事から、
商業・医療・福祉・学習施設を内在させるなどし、
商店街のシャッター街化に貢献している。
選挙が近づくと、かなり耳障りなので忍耐が必要だ。

一方、
周辺に商店はおろか住宅が一軒もなく、
待合室も、改札も、事務室もないという、
プラットフォーム(ホーム)のみの秘境駅や、
公衆が乗車しない貨物専用駅もあり、
それはそれとして人気を集めている。





「平安の長いトンネルを抜けると、戦国であった」その一 〜大和編〜



「馬偏」を使用する駅のルーツは、

古代の律令国家誕生と共にあり、明治の鉄道開業時ではない。

一時期馬車鉄道という簡易路線もあったが、

それは蒸気機関車が席巻した後の話だ。



実は、明治期は「停車場」と呼ばせていたが、
それは庶民になじまず、
江戸時代から続く「宿駅」のイメージから、
「宿」を取り除いた「駅」だけが存続し、
平成の世まで残っているのだ。



そもそも宿駅の前身は、

平安時代末期に消滅した「駅家」である。

五畿七道の駅路沿いに30里ごとに整備され、

早馬の中継所として活用されていた。

これを駅伝制と言うから、入試のために覚えると良い。



私の受験した東洋大学知名度を上げた「箱根駅伝」の語源は、
上記にあり、国が「万一の事態」に遭遇すると、
等間隔で馬を乗り継ぎ、情報を高速伝達するために運用された。
駅を「馬が尺を取る」と書くのはそのためだ。

そして近年、埼玉県所沢付近などで、
かつての官道(入間道)が発掘されて話題になった。
その幅なんと12メートルもある直線道であり、
ザクを搭載したトレーラーと、ガンダムのそれとが、
無理なく行き交うことができる程のスペックであった。



現在の高規格道路に匹敵する規模の道が、

武蔵国大和国とを結んでおり、

大和で任命された国司(注)は、

武蔵へ下り、武蔵で集めた税を、

徒歩によって、担いで、何週間もかけて、遠い大和へ運ばせた。


武蔵の民にとって、それは還る事もままならない、
命がけの旅路であった。
そして、この広大な道は、武士の台頭とともに姿を消し、
歴史に埋もれ、物理的にも埋没した、、、 なぜか。

(注 ; 国司 → 今の都知事に近いが、民衆が選ぶことはできない)





「平安の長いトンネルを抜けると、戦国であった」その二 〜ガンダム編〜



大和への道が閉ざされたのは、
地方豪族が軍事力を蓄えるにしたがい、
無防備な道が、攻め込むために用いられ、
都が脅かされることになるからだ。



この時代の攻撃兵器の主流は、

刀と槍と弓であって波動砲ではない。

同レベルの鉄器を用いた戦闘で、

アドバンテージを得るために欠かせなかった道具は、

ワープではなく「馬」である。



人が飼育する家畜種類は数あれど、
戦争で最も役に立つのは、唯一機動力を備えた馬であった。
限定的には牛や犬も軍用可能だろうが、
馬とは比較にならない。
これは、世界史共通の大原則だ。



地方派遣された貴族の土着化によって、
律令国家の体制が揺らいで来ると同時に、
個々に騎乗し移動するために用いた馬の軍事利用が本格化する。
馬具の進化によって、戦闘に不可欠な操縦ができるようになると、
集団戦法を取って歩兵らを圧倒した。

税の取り立てや情報伝達に欠かせなかった「官道」は、
権威の象徴として「寺」(国分寺)と共に、
国家の最重要インフラであったため、
時の権力者(天皇)は威信と巨費をかけて、
競うように巨大なものを建設した。

とりわけ東国、関東より、防人を徴兵して、
北九州、太宰府へ送る際にも利用された。
だが、非常に過酷な兵役だったため、
どれほどの不満をくすぶらせたかは推して知るべしだ。

幅員の大きい直線道路は馬で攻めるに都合良く、
土地や財産や生命を守る側には不都合な代物であった。
防衛観点から、それが衰滅したことは容易に推察できる。

駅という名にその名残を示す「馬」は、
平成人が思うほど牧歌的ではない。



現実重視の「ガンダム」が宇宙戦士でも合体戦士でもなく、
「機動戦士」なのには、それなりの理由がある。



ガンダムが搭載されているホワイトベースは、
ベガサス級戦艦と呼ばれるが、ペガサスとは天馬のことだ。
いち早く戦場に駆けつけ、敵からの正面攻撃を避けながら、
相手の弱点に詰めより、集中的に打撃を加える事で、
少ない兵力でも勝利する、宇宙の戦闘馬だった。

ジオン軍は、ホワイトベースの正式名称が不明だったため、
その外観から、壊れ易い「木馬」と揶揄するコードネームで呼んだ。
だが図らずも、馬の特徴である機動性を強調してしまっている。

「攻撃」、「防御」が単線的で、
馬鹿でも分かる力学に基ずくのに比べ、
「機動」とは、作戦展開上、
複線的で、より高次な思考を要求する。

ところで、ジオンで主力となっている宇宙巡洋艦の名前は「ムサイ」。
宇宙戦艦ヤマト」ヒットに対抗して、
ガンダム製作の現サンライズのある
「旧武蔵国」に由来して命名したと思われる。

というか、「戦艦武蔵」だけどね。





「平安の長いトンネルを抜けると、戦国であった」その三 〜パトレイバー編〜



機動警察パトレイバー 2 the Movie』では、
地下鉄道(丸ノ内線、銀座線)が機動力を発揮した。

通常運用ではトレーラーで移動するレイバーであったが、
地上は、にらみ合う陸上自衛隊に制圧されていた。

また、その中には機動テロメンバーがまぎれているかもしれない。
警察内で反乱を起こした「特車二課」隊員たちは、
この監視をかいくぐって、敵本拠地を強襲すべく裏街道を行く。



「こんな所が東京の地下にあるとはな」


「湾岸開発華やかなりし頃の夢の跡さ」


「半世紀以上眠っていた地下鉄銀座線の幻の新橋駅と、

湾岸の工区とを結ぶ新旧の結節点」


「結局、使われなかったがね」


「この街には、きっとこういう場所がいくつもあるんだろうな」


往来激しい「地下の新橋駅」の、
壁ひとつ向こうに存在する「幻の新橋駅」は、
右翼テロが横行し、きな臭くなり始めた戦前に作られていた。
しかし、そのプラットフォームはほとんど知られず、
高層ビルが林立する地下でひっそり横たわっている。

というと、昭和の帝都要塞化伝説が甦りそうだが、
公衆が利用しないだけで、地下鉄保守関係者には利用されているようだ。
有名になり過ぎて、秘境としての価値は低い。


管轄は「東京メトロ」だ。

帝都高速度交通営団」というカッコいい名前を、

ウルトラセブンっぽく、変えてしまった日本最初の地下鉄(を引継いだ)事業団は、

東京都交通局の運営する「都営地下鉄」とは何かが違う。


東京メトロ都営地下鉄は一元化できる」の、猪瀬直樹都知事、出馬
http://www.inosenaoki.com/blog/2012/06/post-772b.html





「平安の長いトンネルを抜けると、戦国であった」その四 〜エヴァ編〜



さて、地下鉄メトロの特急ロマンスカーでも行ける、

駅伝で有名な箱根の峠は、

足柄峠に代わって律令時代の後に設けられたものである。

だから、堅固な関所が旅人(使者)を阻んでいる。

そして、その周辺地域には、かつての官道を上回る、

さらに巨大な道が発達している。

「箱根軍用鉄道(エヴァ要塞支線/仮)」である。


緊急時において「エヴァ」は、カタパルトより射出されるが、
自力走行についてはバッテリー消耗による時間制約があるため、
隔地での作戦運用の基本は鉄道運搬にある。
よって、貨物扱いとして地上牽引される。

「仮設5号機(封印監視特化型限定兵器 局地仕様)」は自走強化するため、
例外的に電車化してあることは前述した。

在箱根エヴァは「防衛」に絞り込んで運用されることが多く、
機動戦士ガンダム機動警察パトレイバー機動戦艦ナデシコのような、
「機動〜」という前飾りが相応しくない。




・映画で記述されたネルフ管轄3路線

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』
1.「ヤシマ作戦」における双子山(下双子山)山頂要塞と格納庫を結ぶ路線
軍用道路との交差点には、どこにでもあるような「踏切警報機と遮断機」が存在する
使徒強襲に備えて基礎完成されていたため、9時間での作戦展開が可能となった
電撃に欠かせないトランス搬送には三重連DD(ディーゼル機関車)牽引の狭軌復々々々支線が使用された


ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
2.第7使徒相模湾沖で空襲した2号機の着陸点と格納庫を結ぶ路線
牽引される2号機から、アスカが八艘飛びで下りて来る

(八艘飛び→「屋島の戦い」で名を馳せた平教経の攻撃を、
源義経は「壇ノ浦の戦い」にて、海上を跳ね廻り、躱した)

ヤシマ作戦の砲手シンジは、直後に足払いされる

3.宇宙から飛来する第8使徒迎撃のため用いられた、格納庫直上より八方向へ延びる路線
JR操車場にあるのと同様の大型転車台があるため、狭い場所での方向転換が可能
実際使用されたのは三機で三支線、入り口はトンネルで扉が付いている
着駅にはエヴァ用の電源供給施設が用意されているが、急造感は否めない





「平安の長いトンネルを抜けると、戦国であった」その五 〜 Q 段下編〜


繰り返し強調するが、鉄道(官道)とは本来国家(中央政府)が戦争遂行に要する、
「機動」を補完するために計画された、民衆(地方)支配システムであった。
日本帝国陸軍(関東軍)が事実上経営した、南満州鉄道株式会社はその代表例である。

先にふれた「幻の弾丸列車」は、中国東北部から朝鮮半島を抜け、
対馬海峡の下を海底トンネルで結び、
北九州、神戸を経由し、東京駅へ至るはずだった。

通称「満鉄」と呼ばれた、その多角企業体は、
ヤマトという高級ホテルチェーンも展開している。

太陽を盗んだ男』、を、追いつめる山下警部の下の名前は、
満州男」(マスオ)というが、満州との関連は不明だ。
もしかしたら、大陸で産み落とされた、開拓民の子供だったのかも知れない。

ソ連軍に追われ、ひもじい思いをしながら、命をかけて辿り着いたのは東京。
そして「九番」を名乗るテロリストに導かれた終着駅は「九段」だった。
ここには、特攻隊員らを祀る靖国神社がある。


ちなみに関東軍は、
中華民国からの租借地であった関東州から来ており、
武蔵国が含まれた関東とは関係ない。




ヘッドセット形状が真希波・マリ・イラストリアスとシンクロしたため、
過去に投稿した画像の閲覧が急増している、
ヒカルものたち渡辺麻友さん。




・付録情報・
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 』超ヒット公開中
ウルトラマン』「デジタルリマスター版」TOKYO MX・毎日曜18:30放送中
宇宙戦艦ヤマト』リメイク版DVD第三巻発売中
機動戦士ガンダム』毎木25:10放送中(テレ玉)


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