映画上映権 パート1


質問: 試写会と一般興行の違いとは何であるか


1. 試写会は無料で、公開前に見ることができる。


2. 一般の興行は有料で、公開日以後にしか見ることができない。


正しいが、これは現象だけをとらえた見方である。
(はてな の解答も同じだが、重要な点が抜けている)


一般の人が試写会プレゼントに応募して、抽選により招待のお知らせが来たとする。
これを「単に映画をタダで見る権利を獲得した」とすると、少し誤解が生じる。
回りくどいが、ありがちな話を例にとって説明する。



もとの文章は「試写会」ではなく「国家の暴力装置」というテーマでした。
(ほぼ原文で掲載します)



映画上映権 パート1


試写会場が満員だったり、時間に遅れたりして入場することができない場合、
その主催者にたびたびクレームが寄せられる。

「招待されたから来てやったのに、映画を見せないとは何事か」

「どうしても見せないなら、交通費やかかった時間分の労力を賠償せよ」

などなど。


映画を途中から見ようが立ち見しようが、それは本人の自由である。
しかし、試写会については許されない。
それは招待状に必ず明記されている。
なぜなのか。


もう一度、違いに立返ると、一つの事実が明らかになる。



劇場で映画を見る場合、その受付をするのは劇場アルバイトであり、
何らかの問題があった際のクレームの矛先は、劇場の営業係か支配人に向かう。


ところが、試写会の受付を会場(ホール)の人間が直接することはあまりない。
必ず、映画会社のスタッフか、その委託を受けた関係者によって来場者を迎えているはずである。
問題があれば、その会場に派遣されている現場の責任者が受け答える。


つまり、運営の主体が異なるのである。


試写会の主催は、基本的に劇場を所有しない「配給会社」で、
有料上映の場合のそれは、劇場を所有している「興行会社」になる。


より消費者に近い川下企業が興行会社で、
出来た商品をそれらに届ける部門が配給会社であると言えるかもしれない。


二つの事業主は似ているが、何を持って会社の利益とするかで役割を分担している。


劇場では、人々に映画を見せるというサービスを提供し直接対価を得るため、
来場者の絶対的な満足を目指さなければならない。


しかし試写会の場合は間接的にはともかく、

「絶対的な満足まで保証する義務はない」

文字が語るように、あくまで「試験映写」だからだ。


配給会社が無料で見せるのは、
「有料で見せる権利を予め興行会社に販売している」
からである。


業界内で厳密なルールを設けることによって、
その仕組みの上で健全なビジネスが成立している。


無料なのは結果であって、観客を喜ばせるためではない。
公開前に限定しているのも配慮ではなく、
単に公開前にしか上映する権利がないからである。


配給側にとっての直接のお客さんは劇場運営会社であり、
全国の劇場にたくさんの人が集まるようにするのが、前者の務めである。
そのために多額の予算を使って宣伝業務を遂行するのである。


試写会の目的は端的に言うと、
サービスの無料提供にはなく、映画を流通させる市場活性化のためにある。


マーケティング戦略や、作品自体の評価が定まっていない映画を見せるのだから、
人によって大満足できたり、そうでなかったりする。
そういう可能性やリスクを踏まえて参加するのが試写会であり、
不満足な結果責任を、配給会社に消費者論理で物言いするのは本来的に間違っている。


保税や翻訳、技術的なことを除けば、宣伝以外の目的で行われる一般試写会というのは原則としてありえない。
読者プレゼントや視聴者プレゼントというのは、仲介している媒体社が告知をまかなうことによって、
その目的をカバーしてくれている。


ゆえにおおよそ満足できうる映画を、一般消費者は一足先に見ることもできるが、
それはたまたま結果がそうなっているだけのことである。(中略)


以上『ザ・シューター/極大射程
学生限定試写会「コメント下書き」と、mixiコミュの「書き込み」より転載
(略文章はコメント蘭に)


次回
映画上映権 パート2 「試写会における三権分立
に続く


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