2/5に見た映画

先週に引き続き、またしても空港で足留めされる映画、その本命


肉弾飛び散るノルマンディーに上陸し、たったひとりの命を救うために、七人の精鋭を激戦にさらす元高校教師の隊長。ヤシ林の無人島に漂着し、たったひとつの荷物を届けるために、大洋に向けて手作りいかだを漕ぎ出すFedExの元管理職。役の度に、太ったり痩せたりをくり返したトム・ハンクスは、『ターミナル』では見事な中年太りになって、たったひとつのものを手に入れるために、身柄の保証を失う元クラコウジア国民を演じた。


キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』のポスタービジュアルが入ってくるか来ないか、の時にこの映画の文字情報を読んだ時は、さもシリアスな政治ドラマが期待できると思ったが、そういう意味では『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』以上に肩透かしをくらった、軽快なヒューマンドラマであった。ストーリーのおとぼけ具合が効を奏したか、久しく超級ヒットの出なかったスピルバーグ監督作も最終ランに入って、41億を超える日本円を稼いだことは、業界関係者とっても予想外の結果かも知れない。『宇宙戦争』に続き、『トランスフォーマー』なんかの製作が明らかになった彼の日本指向が加速しそうだ。


七人の侍』へのオマージュのような『プライベート・ライアン』もそうであるが、ひいきの日本の監督、黒澤明つながりで言えば、たったひとつの街公園を作るために、残された生涯をかけて死んだ元市民課の小役人『生きる』を、ハンクス主演でリメイクすることも決まっている。参考まで。


国と国との取り決めにもとずく入国審査は、そのどちらかの国が行政を放棄した瞬間に、人道的な対応も不可能となる。例外規定も摘要できない一介の哀れな旅行者は、言葉も操れないため文明の外側へ『キャスト・アウェイ』されるのであった。命がけで救った二等兵ライアンが、6カ国の国籍を持ち、6カ国語をしゃべれる最強のスパイへ変身しているのとは対称的である。後者の彼はスイス警察に追われた時、偽りの米名「ジェイソン・ボーン」を語り、治外法権アメリカ領事館内へ逃げ込むことができた。


国際ルールの境界『ターミナル』は、新鮮な角度で掘り下げてくれると思った規範弊害のかた苦しさには迫らず、法の矛盾を揶揄したエピソードをいくつか盛り込んだだけで、主人公とそれを取り巻く決して悪過ぎない人たちの、あたたかい交流にほのぼのしている間になんとなく解決された気分になり、後に引かない感動で満たされて終わる。公開最後の土曜夕方、巨大箱歌舞伎町プラザは観客整理が超ラク


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