1/29 劇場で見た映画

『Ray』


主人公レイ・チャールズは、確かカナダの空港で逮捕される、麻薬絡み。


ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月』もそうだった。
タイの空港で麻薬密輸の疑いで誤認逮捕されたブリジットは、一緒にいたダニエルに置いてきぼりにされるが、ある手段で解放される。そのくだりは下手なスパイ映画よりもおもしろいと感じてしまった。甘ったるい映画を楽しむ流れの中ではさして重要な意味を持たないが、すべてのたわいもない日常シーンに一向に興味が湧かない中では、塩気が効いていて良かったという程度に。でも、もう一度DVDで一作目を見たら、ワンシーンワンシーンが前よりおもしろくなっていた。出演者のプロファイルが把握できていないと乗れない、日記覗き見趣味の映画なのであった。

ミステリー好きの男には、まあ向かない(『1』に馴染めたら見よう)。

「レイ」にとって、覚醒剤常用の罪は逃れ様のないものだったが金の力で保釈される。その後、差別の残る南部ジョージア州行政にも楯突いた、しかし結局折れたのは大衆を敵にまわすことを恐れた側だった。「権謀術数の限りをつくす」と言うと聞こえが悪くなってしまうが、持てる能力を有効に活用して既成権力に風穴を開ける結末は、ドラマの落ちつかせ方にはちょうど良い。初日9時20分スタート「みゆき座」としてはまあまあの入り、アカデミーノミネートをことごとく外していたらどのくらい減っただろうか。


スパイ・バウンド

さて、次に見たB級感ただようタイトルの作品は、あまり期待してなかった映画である。『マイ・ボディーガード』の予告で初めて知って、実話に基づく話であるなら見るかもしれないと思った、暇だったら。素材の「虹の戦死号爆破事件(1985)」という響きがリアルっぽくて引かれた要素になっている。(その昔日本で、近所に評判の若い夫婦が天皇暗殺を目論んでアパートで強力な爆弾を作っていたという未遂事件があった。作戦名は「レインボー作戦」、その爆弾の威力を確かめようと三菱重工の玄関に仕掛けたが、予想以上の破壊力だったことと、予告電話を受けた守衛がいたずらだと思って無視したために甚大な被害が発生した。夫婦は東アジア反日武装戦線の一派“狼”)


予告の映像はきれいだった、ただしモニカ・ベルッチを全面に出して必要以上に煽っている感があってやや引いた。CMスポットは一本も見なかった、宣伝予算も少ないはず。「私を奪い返す」ってコピー、映画を見ないと何のことか分からないけど、そういう面もある。たぶん、「モニカ=“私”=ターゲットとされている大勢の女性」という感じで共感を集めたかったのだろうが、届いていない。


映画のストーリーは、日記のように「フランススパイの日常を淡々と記録するよ」的に進行する。与えられた国外任務も完遂し、さあ足を洗おうというところで、彼女はその足下をすくわれる。

誰に?

武器商人であるところの敵の懐刀。

ではなくて指令を下した上司、もしくは上層部(国家)に。

映画は中盤。

空港の荷物チェックで白い粉が発見される、覚醒剤所持の現行犯。
同行していた覆面夫婦の夫役、ヴァンサン・カッセルはこりゃヤバいってことですかさず出国。

「お前はヒュー・グラントか」という突っ込みが入る。

このダニエル役じゃない、ジョルジュ役のヴァンサンがストーリー本来の主人公で、
エンドロールの順番もこちらが先になっている。彼は『ボーン・スプレマシー』並の機知とアクションを繰り広げてくれるが、華がないと判断されたか宣伝からは切り落とされている。残念。

そして収監されたモニカには助けの手が伸べられるものの、治安総局との取り引き条件が課せられていた。だから、弾圧されているか弱き「私」(でも殺し屋)を国家の縛りから「奪う」というもの。分かりやすい悪役との対立ではなくて、庇護者との戦いであるだけに問題は複雑である。単に自立を目指す、今どきOLや主婦にはとても共感しようのない設定なのであった。実際、若い女性客はいたっけなかなぁ(初日「丸の内ピカデリー2」2回目で65%くらいの入り)。

ミステリー好きの男には拾い物だが、こんな映画があるってことは知らないだろう。

ラストシーンで気付いたが、ヴァンサンを主体に現代版『ブレードランナー』と思って見ると、勘違いを誘う宣伝戦略と違った視点が作れて面白いと思う。レプリンカント=スパイ同志の殺し合いの果てに得た結論、それは運命に逆らい組織からの逃亡をはかる自分勝手な愛。(ブリジットなんかを愛する女性を捨てて、男向きにターゲットを替えDVDで最後の勝負をしてほしい)


カンフー・ハッスル


シンチー監督・主演最新作は、「意外な設定」というのをラジオのコメンテーターが力説していたので見に行った。(公開一ヶ月土曜の「サンシャイン池袋」6時の回、若者ばっかりで5割の入り)おもしろく笑えるのは先の展開が読めてきた半分までで、後はCMで何度も見たから早送りでいい。でも、人に言いたくなる心理を上手くついた設定の勝利で、話題感はここ最近一番強く感じる、おめでとう。

個人的には、取ってつけたような聾唖少女とのその後のエピソードにうるうるした。


盲目の『Ray』もラジオコメントを何度か聞いた。
でも、自分からはそんなに見る気にならない。音楽という切り口は分かるけれども、わたくしジャズ(ソウル)好きじゃありませんから。その偉大な人の生涯と言われても、ゼロにいくつかけてもゼロなので。

ということで、「あんまり伝記言うな」と言われている。

これは正しい。しかもよくみたらミュージカルみたいなところもあるし、完全にドラマ作ってるがな。肩ひじ張らずゴールデン・グローブ賞主演男優賞受賞作品として見に行ったらよろしい。


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